執筆担当 弁護士 奥田智子
広告表現にはいくつもの法規制があります。
たとえば、効能効果表現について規制する医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」)、優良誤認表示や有利誤認表示について規制する不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」)、訪問販売、連鎖販売、通信販売などの特定商取引における広告上の表示義務等について定める特定商取引に関する法律、電子メールによる広告について規制する特定電子メールの送信の適正化等に関する法律などがあります。
このうち薬機法では、承認・認証を受けていない医薬品・医療機器・再生医療等製品について、効能、効果又は性能等に関する広告をすることを禁止しています(同法68条)。このため、医薬品・医療機器・再生医療等製品ではない商品は、そもそも効能、効果又は性能に関する広告(医薬品的な効能効果表現)をすることが禁止されます。
例えば、「がんに効く」、「高血圧に効く」など病気の治療又は予防を目的とする表現や、「疲労回復」、「老化防止」など体の機能の一般的増強、増進を目的とする表現が、医薬品的な効能効果表現に該当します。
「〇〇に効く」などといった直接的な表現をしていなかったとしても、「高血圧の方に」など、病的症状のある方を対象者として表示することで医薬品的効果を暗示している場合も、違反に該当すると判断されますので注意が必要です。
また、仮に、その商品にそのような効果があることが証明されており客観的事実であったとしても、承認・認証を受けた医薬品ではない以上、医薬品的な効能効果は広告で謳ってはならない、ということになります(なお、医薬品成分を含む製品は医薬品となりますので、薬機法の承認・認証を受けずに販売することは禁止されています。)。
この規定に違反をすると、2年以下の懲役または200万円以下の罰金という重い刑事罰が課されます(同法85条)。
比較的新しい事例では、インフルエンザウイルスに効果がある、などと謳い飲料水を販売していたとして会社代表者や従業員が逮捕された事案があります。
化粧品については、「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日薬食発0721第1号厚生労働省医薬食品局長通知)で、表現できる範囲が56項目規定されています。例えば、「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」、「肌にハリを与える」、「(洗浄により)ニキビ、あせもを防ぐ(洗顔料)」などの表現があります。
なお、一般的に“化粧品”と認識されているものの中には、薬機法上の「医薬部外品」が含まれていることがあります。医薬部外品の場合、承認を受けた範囲で効能効果を謳うことが可能となります。最近では、承認を受けて「シワの改善」との表現が可能となっている医薬部外品(美容液)などもあります。
効能効果表現の規制は、健康食品や化粧品に限らず、繊維製品(衣料品)などにも適用がありますので、例えば、「履くだけで痩せる!」と謳った商品は、違反となる可能性が高いです。他方で、運動する際の動きをサポートする製品であり、履いて運動をしたら、運動によって痩せられると表現することは(事実であれば)可能ですので、その商品の宣伝したい内容がどこにあるのかをよく考え、“適切な広告表現を見つける”ことが必要になります。
いぶき法律事務所では、化粧品、健康食品、繊維製品等様々な商品の広告について法律に違反する表現となっていないかどうかリーガルチェックのご相談をお受けしています。また、自社で法律を遵守した適切な広告表現を行うことができるよう、従業員研修などのご相談にも応じています。
広告表現規制part2では、景品表示法における広告表現規制についてお話をしたいと思います。
以 上