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2024.05.13

宅地の欠陥に関する損害賠償請求について、販売業者・建築業者は倒産したが宅地建物取引業保証協会から賠償金の一部を回収できた事例

執筆担当 弁護士 奥田智子

 自宅不動産の購入者が、宅地の欠陥を理由に、販売業者及び建築業者に対し損害賠償を求め訴訟を提起したところ、訴訟の途中で業者が倒産してしまいました。

  損害賠償請求の相手方が倒産してしまうと、いくら裁判で勝訴したとしても賠償金は返ってきません(業者にいくらかの財産が残っていれば破産手続きの中で配当金を受け取れることはありますが、通常ごくわずかです。)。

  しかし、この事案では、訴訟を提起するに先立ち、不動産業者が加入している宅地建物取引業保証協会に対し、認証申出を行っていた関係で、勝訴後、宅地建物取引業保証協会から、弁済業務保証金として賠償金(2社で合計2000万円の上限額満額)を受け取ることができました。

  判決で認められた賠償金には不足しましたが、相手方の倒産にもかかわらず、まとまった額の賠償金を回収することができました。

 

弁済業務保証金とは

  宅地建物取引業者は、宅地建物取引業法に基づき、営業保証金を供託することが求められています(同法25条)。この保証金は高額で、主たる事務所につき1000万円、その他の事務所ごとに500万円です。これは、宅地建物取引業者が、宅地建物取引をした相手方に対して損害賠償義務を負うこととなった場合に、取引の相手方を保護するための制度です。

  しかし、宅地建物取引業を始めるにあたって必ず1000万円を供託しなければならないとすると、資金のない業者は新規参入が難しくなります。そこで、宅地建物取引業保証協会(以下「保証協会」といいます。)は、会員である宅地建物取引業者の代わりに、会員の取引相手(宅建業者を除きます。)に対し、営業保証金の代わりに保証金(弁済業務保証金)を支払う義務を負うという制度ができました。宅地建物取引業者は、保証協会に加入し、保証金分担金を協会に支払うことで営業保証金の供託義務が免除されます。

  宅地建物取引業者が支払う保証金分担金は、主たる事務所につき60万円、その他の事務所ごとに30万円のため、宅地建物取引業者にとって、営業保証金を供託するよりも負担が小さく、ほとんどの業者が、いずれかの保証協会の会員になっています。

 

弁済業務保証金は認証申出の受付順

  そのため、不動産の欠陥などを理由に宅地建物取引業者に損害賠償請求をしていこうとした場合に、その請求金額が高額になりそうであるが業者の資力に不安がある場合は、業者が加入する保証協会に対し、保証金の支払いを求める「認証申出」を行うことを考える必要があります。

  この保証金で保証される上限額は、宅地建物取引業者の事務所数によって異なりますが、例えば事務所が一つの業者の場合は1000万円となります。しかし、これは、債権者1人につき保証される金額の上限ではなく、宅地建物取引業者1社につき保証される金額の上限です。

  つまり、同じ業者から欠陥住宅を購入した被害者が複数いたとしても、保証協会が保証してくれる金額は全員で1000万円までである、ということです。 そして、重要なことは、複数人が認証申出をした場合に、保証がされる順番は、認証申出の受付順で決まる!ということです。

  例えば、最初にAさんが400万円の被害について認証申出をし受付がされ、次にBさんが700万円の被害について認証申出をし受付がされ、そのあとでCさんが100万円の被害について認証申出をし受付がされた場合を考えてみます。

  仮に、ABC全員の申し出の内容が保証協会によって全部認められるとします。その場合、まず、Aさんに400万円が保証金から支払われます。これによって保証金(上限1000万円の場合)は残金が600万円となりますので、Bさんは700万円の損害が認められましたが保証金は600万円が支払われます。Cさんは保証金が残っていませんので保証協会から保証金の支払いを受けることができません。

  このように、申出書の受理の順番で優先順位が決まってしまいます。そのため、損害額が多額の場合、宅地建物取引業者の資力に不安がある場合などは、早い段階で認証申出を行っておくことが、被害救済のためにも必要となります。

  なお、認証申出をした場合、保証協会が審査(認証審査)を行い、申出内容が宅地建物取引に関するものに該当するかどうかや、債権の金額の算定などを行った上で保証金の弁済が行われます。認証申出にかかわる請求に関して訴訟が係属している場合は、通常は、判決を待って認証審査が行われます。

 以上