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2025.10.29

大阪・関西万博の体験

執筆担当 弁護士 鈴木伸太郎

1 はじめに

 2025年、大阪・夢洲で開催されている「大阪・関西万博」を訪れる機会を得ました。世界各国が一堂に会し、未来の技術と多様な文化を体感できるこの国際的イベントは、まさに「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマにふさわしいものでした。これまでに合計2回訪れましたが、その中で、特に印象に残ったパビリオンをいくつか紹介したいと思います。

2 技術と未来を感じるパビリオン

 2025年大阪・関西万博に出展された「TECH WORLD(テックワールド)」は、台湾の先端技術と豊かな自然をテーマにした民間パビリオンです。

 建築コンセプトは「心の山」。高くそびえる山々を模した外観が印象的で、館内では「生命」「自然」「未来」の3つのゾーンを通じて、来場者の“六感”を刺激する没入型体験が展開されています。入場時にはスマートブレスレット型デバイスが配布され、心拍数の変化を記録し、どの展示に最も心が動いたかを分析し、退館時には個人に合わせた台湾旅行のおすすめプランが提示されるという、ユニークな仕掛けも特徴的です。展示では、8K映像による自然美の表現、半導体技術の紹介、胡蝶蘭を使ったインスタレーションなどが高い評価を得ており、技術と芸術が融合した空間は、まさに“未来を体感する場”と呼ぶにふさわしいものです。

3 各国の文化とビジョン

 イギリス館は「Come Build the Future(ともに未来をつくろう)」をテーマに、英国の創造力・テクノロジー・サステナビリティを紹介する没入型展示が展開されていました。産業革命から現代のAI技術、そして未来のビジョンまでを、映像・音・空間を駆使したインタラクティブな演出で体験でき、特に「小さなアイデアが世界を変える」過程を視覚的に表現した展示が印象的でした。

 オーストリア館では、音楽と自然を融合させた空間演出が特徴的で、来場者はアルプスの風景を模した没入型空間の中で、オーストリアの環境技術や文化的価値に触れることができます。特に、音楽と映像が連動するインスタレーションは、芸術と科学の融合を体感できるユニークな試みでした。

 スイス館は、環境保護と持続可能性を中心に構成されており、アルプスの自然と未来都市の融合をテーマに、再生可能エネルギーや循環型社会の実現に向けた取り組みが紹介されています。展示はシンプルながらも洗練されており、スイスらしい精密さと自然への敬意が感じられました。

 UAE館では、未来都市構想「スマート・ドバイ」や宇宙開発、持続可能な社会への取り組みが紹介されており、湾岸諸国の先進的な技術力と文化的アイデンティティが融合した展示が展開されています。特に、火星探査プロジェクトに関する展示は、科学技術への国家的投資の姿勢を強く印象づけるものでした。

 サウジアラビア館では、未来都市「NEOM」構想を中心に、持続可能性と革新をテーマとした展示が行われています。巨大なLEDスクリーンによる都市のビジョン紹介や、伝統文化と未来技術の融合を図った空間設計が特徴的で、サウジアラビアの変革と国際的な発信力を感じることができました。

 インド館では、伝統と革新が共存する展示が展開されており、特に医療技術と教育分野における進展が印象的でした。ヨガやアーユルヴェーダなどの伝統的知識と、AIやバイオテクノロジーなどの先端技術が融合した展示は、インドの多様性と未来志向を象徴するものでした。

4 食文化の楽しみ

 万博の魅力の一つは、世界各国の食文化に触れられることです。今回はポーランド料理をいただき、ビゴスやピエロギなどポーランドの代表的な家庭料理に舌鼓を打ちました。また、チェコやイギリスのクラフトビールも楽しみ、食を通じて文化の多様性を実感しました。

5 大阪万博での気付き

 大阪・関西万博は、未来社会に向けた技術や文化の展示だけでなく、我々法律家にとっても多くの示唆を与える場でした。特に、AIやロボティクス、再生可能エネルギーなどの技術革新に触れることで、これらが既存の法制度にどのような影響を及ぼすのか。たとえば、自律型システムに関する責任の所在、個人情報の保護、知的財産権の扱いなど、技術の進展に伴って新たな法的課題が生じることは明らかです。また、各国が気候変動や教育、都市開発といったグローバルな課題に取り組む姿勢を示していたことから、国際的な法規範や協定の重要性についても再認識しました。国際社会が共通の課題に向き合う中で、国内法と国際法の整合性をいかに保つかは、今後ますます重要なテーマとなるでしょう。このような体験は、日々の法律実務にも活かされます。新技術を導入する企業への法的助言、国際取引における契約内容、環境法やデータ保護法の遵守支援など、実務に直結する知見を得ることができました。万博は、法律家にとっても未来を見据えた思考を促す貴重な場であると感じています。

6 おわりに

 大阪・関西万博は、10月13日をもって閉幕しましたが、いずれまた日本で開かれることがありましたら、是非とも足を運んでみたいと思います。