執筆担当 弁護士 三木憲明
弁護士の仕事は、紛争解決のお手伝いをすることだけではありません。
企業法務の中には、いわゆる予防法務として、契約書をはじめとする各種書面のリーガルチェック、経営判断の最適化等に資するためのリーガルオピニオンの作成、ガバナンス構築のための社内規程やマニュアル等の整備・モニタリング・改訂の支援などがあります。いずれも正確な法的知識が求められるものですが、加えて当該企業のビジネスと組織の実態に対する理解を前提に、潜在リスクの査定を行い、これに対する適切なリスクヘッジとリスクテイクの提案を行う(当該企業と密に協議する)よう努めています。
中でも、社内規程やマニュアル等の社内ルールは、つくるだけでは足りず、実行とモニタリングを通じて不断の改訂を行っていく必要があります。この領域で弁護士が企業と連携して持続的に支援を行っている例は多くないと思いますが、私の場合は、半年から1年の間、1か月に2~4回、社内のプロジェクトメンバーを束ねる立場で会議に参加し、ときには自ら起案作業を行い、ときには担当者に対して助言するなどしてきた経験があります。社内ルールには多種多様なものがあり、ビジネスの実態や監督官庁による規制のあり方などによっても変わってきます。しかしながら、たとえば定款、株主総会規程、取締役会規程、職制規程、稟議規程、経理規程、監査規程、個人情報取扱規程などの基本的な社内ルールについては、上場企業でも、中小企業でも、コンプライアンスとガバナンスのレベルアップを目指す企業では普遍的に重要なものです。その意味で、近年では、多くの企業からお問い合わせのある分野になっています。上記の外にも、就業規則や従業員持株制度(持株組合)についてのご相談を受けることも少なくありません。また、特殊なものとしては、景品表示法が求める社内体制の整備・運用、調査体制の構築についても取扱例があります。
いずれにしても、ピンポイントでのアドバイスではなく、継続的な連携の中でチームの一員として社内ルールの構築、改善に取り組ませていただくことは、当該企業の成長に貢献させていただくことだと自覚しています。