執筆担当 弁護士 奥田智子
「お客様満足度 No.1」という表示を目にしたことがある人は多いと思います。他にも「知人に紹介したい〇〇 No.1」、「〇〇の方におすすめしたい No.1」などといった表示も見たことがある人は多いのではないでしょうか。「No.1」表示は、今まさに流行りの広告表現方法の一つです。
令和5年度、消費者庁は、「No.1」に関する表示について、9件、14事業者を対象に、景品表示法や特定商取引法に違反するとして行政処分を行いました。これらの状況を踏まえ、同庁は、2024年3月、印象を問うようなNo.1表記について、実態調査を行うと発表していました。その結果、同年9月26日、「No.1表示に関する実態調査報告書」(同日付け)が公表されました。
No.1表示については、過去、平成20年に公正取引委員会が「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表しており、No.1表示の望ましいあり方についての考え方がまとめられていました。例えば、適正な表示の要件として、
①内容が客観的な調査に基づいていること
②調査結果を正確かつ適正に引用していること
の両方を満たす必要があることなどの考え方が示されていました。
今回の調査は、「顧客満足度」や「コスパが良いと思う」など、第三者の主観的評価を指標としているNo.1表示を対象に調査がされました。報告書では、調査結果を踏まえて、「不適切と考えられる典型例」がいくつか列挙されています。
例えば、
・「〇〇サービス 満足度No.1」と表示する場合に、〇〇に属する同種商品等のうち市場における主要なものの一部又は全部を比較対象に含めずに調査を行っている場合
・「顧客満足度 No.1」と表示しているにもかかわらず、対象商品等を実際に利用したことがない者を調査対象者としたり、利用経験の有無を確認することなく調査対象者を選定している場合
などは、表示が合理的な根拠に基づいているとはいえず、景品表示法上問題となるおそれがあるとされています。
一見すると、当たり前のことを言っているだけのように思われますが、報告書は次のことを指摘しています。
・調査会社の調査内容や調査方法を確認せず、また、報告された調査結果を鵜呑みにして広告表示をしている広告主が少なくないということ
・複数の調査会社が、不適切な調査を廉価で行っているという実態があるということ
No.1表示のような広告を行いたい場合、広告主はマーケティングリサーチ会社に委託して調査を行うことがほとんどです。しかし、調査対象が適切であるか、調査方法が適切であるか、比較対象商品・サービスが適切であるか等、調査の内容を確認することなく、正確な広告表示をすることは困難です。
対消費者や対行政との関係で、表示の責任を負うのは広告主(販売者等)であり調査会社ではありません。広告主(販売者等)は、適切な調査が実施され、調査結果と広告内容との間に齟齬がないか、適切な表示となっているかを、不適切な調査が存在するという実態を意識して、自らチェックすることを心掛ける必要があります。
<参照サイト>
消費者庁HPより
〇令和6年3月21日消費者庁長官記者会見要旨
https://www.caa.go.jp/notice/statement/arai/037191.html
〇No.1表示に関する実態調査報告書(令和6年9月26日公表) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/survey
公正取引委員会HPより
〇(平成20年6月13日)No.1表示に関する実態調査について(概要)
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/cyosa/cyosa-hyoji/h20/08061302.html